Project Story No.01

プロジェクト
ストーリー

Story
No.01

変化した市場環境への追従を
阻んだセクショナリズム

マネージングディレクター 小川 克己が語る

業務も体制も
すべてが
時代遅れに

X社は、加工食品を手がける大手企業。主力事業のブランド認知は非常に高く、製品名を挙げれば誰もが知るほど。だが近年、その主力事業が、業績の足を引っ張っていた。会社全体では黒字を維持しているものの、主力事業そのものは赤字となっていたのだ。

その要因のひとつは、競争環境の変化だ。X社の主力製品の市場では、一年間に市場全体で数百もの新製品が発売されるのだが、かつての新製品投入量はその10分の1程度だったため、それに慣れていたX社は、極端に短くなった新製品投入サイクルの変化に対応しきれずにいた。その結果、新商品の投入量・質に劣るX社は、市場シェアにおいて1位と2位には大きく水をあけられ、3番手グループに甘んじていた。

もうひとつの要因は、社内にあった。業務プロセスや組織、情報システム等が、長らく更新されないままずるずると継続しており、在庫の数量がリアルタイムに見ることができないなど、業務・情報システムともに効率が悪化して、主力事業は満足のいく利益を生み出せない状態に陥っていた。

当然、X社もそのことは認識していた。そこで、当時の社長が自ら大なたを振るい、不採算工場を閉鎖するという外科的手術によって、効率改善を試みた。しかし、それなりに効果は出たものの、主力事業の赤字の解消にまでにはいたらなかった。そこで、同時期に検討を進めていた基幹システムの更新を提案していたシステムベンダー経由で、CDIソリューションズ(CDI-S)に業務プロセス改革が依頼され、担当ディレクター以下、数名のチームで挑むこととなった。

だが、プロジェクトの開始当初から、担当ディレクターには不安要素があった。それはX社から、CDI-Sに対するネガティブな感情を感じる場面が少なからずあったためだ。X社では、それまで業務改革に関してコンサルタントに依頼したことがなく、これまでは自分たちだけでやり遂げてきたという自負が、CDI-Sに対する反発心という形で表出していたのだ。

数字を隠す
営業と
勝手に計画変更
する生産現場

プロジェクトの第1フェーズは、課題の洗い出しに当てられた。
機能が不足している情報システムや、古い商慣習に合わせた業務フローなどいくつか要因はあったが、正確な在庫が把握できないことで、さまざまな不都合が生じていた。そのひとつは過剰在庫や欠品の常態化で、在庫が過剰になれば、その圧縮には商品を引き取ってもらうための値引きやリベートといった追加経費が掛かり、欠品による機会損失回避のためには、緊急増産のための残業や臨時要員の確保、個配業者による臨時配送等でコストが増大していた。

さらに、CDI-SのチームがX社内でのヒアリングを重ね、業務プロセスの見直しを進めていくと、在庫が安定しないことの要因は、単に情報システムの問題だけではないことが見えてきた。

X社では、営業担当者が事前に顧客から発注見込みをヒアリングし、前月に販売計画を作ることになっていたのだが、そのあとに顧客の発注見込みが変わったとしても、その数字は販売計画に反映されていないという事実が新たにわかったのだ。

もちろん、営業担当者は顧客に日参しており、発注見込みの変化は常に把握している。だが、その新たな数字を販売計画に織り込むプロセスが存在しないのに加え、営業担当者が手間をかけてそれを行うインセンティブが無かったのだ。また、X社の生産計画が上旬・中旬・下旬というサイクルなのに対して、流通小売では週次で見込みを立てるというズレも悪影響を与えていた。そのため、最新の数字は営業担当者の手帳に記されるだけにとどまっていたのだ。

一方、営業担当者が作成する販売計画の精度が低いことは、製造サイドも認識していた。製造部門は元々営業担当者の販売計画を元に生産計画を立てるルールにはなっていたが、いつの頃からか、それをあてにせずに独自の生産計画を作成していた。営業、製造のいずれの部門も会社に損害を与えるつもりはまったくなかった。だが、長らく機能別に分かれた縦割りの組織構造が続いたことで、部門間の対立意識が生まれ、それぞれの部門に関わることだけを実行し、他部門の事には口出ししないといった文化が定着してしまっていたのである。

セクショナリズムを
どうやって解決するか?

徹底したヒアリングによって、長らく続いた縦割り組織によって生まれた部門間の対立意識と、それによって部署の利益こそ会社全体の利益だという誤った認識が存在することに、担当ディレクターは気がついた。

この課題を解決しなければ、仮に基幹システムを入れ替え、営業部門が最新の販売見込み数値をリアルタイムでインプットしても、生産部門が独自の判断で生産計画を作成してしまう恐れが残る。また、単純にシステム上の縛りで生産部門の判断で生産計画を変更できないようにしたならば、生産部門は「自分たちの権限が奪われた」と感じ、わだかまりはいっそう深刻なものになりかねない。

そこで、CDI-Sのチームはサプライチェーンを立て直すために、新たな基幹システムの導入によって在庫のリアルタイム管理を実現するのと同時に、業務プロセスの抜本的な見直しとそれに最適な組織体制を構築した。

その体制構築とは、販売、生産、物流部門からエース級のスタッフを選抜し、営業の需要予測をベースに生産計画及び物流計画を作成する専門部署の創設である。新設された専門部署は、サプライチェーン全体の最適化をミッションとし、社内のさまざまな組織に横串を通す形で作った。また、そもそもの需要予測の精度向上のために、営業の販売計画と実績とのズレを営業拠点のKPI(key performance indicator)とし、拠点間でそのKPIを競わせると同時に、営業担当者の人事評価にも反映する仕組みも導入した。

そしてもうひとつの大きな施策が、それぞれの部門内のメンバーの意識改革だ。部門最適ではなく、全社最適の観点で各部門が協力しながら業務を遂行する。そうした新しい風土を作り出すためには、明確な根拠に基づき、根気強く説得活動をする必要がある。CDI-Sのチームは、このまま現状の赤字垂れ流しの非効率な業務を続けていくと会社がどうなってしまうのか、あるいは、新体制では需要予測の頻度を上げることで特定部門の負荷は高くなるものの、全社の視点で見ると後ろ工程での残業や臨時要員の作業工数が大幅に減るなどのシミュレーション結果を数字で見せ、時には優しく、また時には厳しい言葉をもって、X社の社員に対して語りかけたのだ。その結果、この施策は見事に実を結んだ。

正しいやり方を
正しい人に伝えることが正解

担当ディレクターを初めとするCDI-Sのチームは、「在庫が不安定」という課題を明確化するにあたって、流通担当だけでなく営業から生産まで関係する部署、担当者に粘り強く話しを聞いて回って、真の課題と解決策を導き出した。
だが、それを実際にX社が実行しなければ、絵に描いた餅で終わる。このプランの成否は、第1フェーズ終了時の役員会に掛かっていた。

担当ディレクターは、1か月半に渡り毎週行われた臨時役員会において、第1フェーズの報告資料を懇切丁寧に説明した。当初はなかなか理解が進まなかった役員達も、回を重ねるにつれて少しずつプロジェクトの真意を認識し始めた。すると、ある時を境に、当該プロジェクトのキックオフミーティングでは最もネガティブな態度だった社内でも一目置かれている実力者の役員が、打って変わって今回のプロジェクトを絶賛し始めたのだ。なかでも、営業起点でのサプライチェーンの最適化や部門間の対立意識を解消するための組織変更について、「これこそ自分がやりたかったこと」と全面的に賛同し、自らの担当地域に先行導入してパイロットケースとすることを申し出るほどだった。

業務改革に際して、これまで外部コンサルタントに依頼する経験がなかったX社だが、先入観をもたないヒアリング、ファクトを徹底的に突き詰める分析によって、真の課題に迫った担当ディレクターとチームの仕事ぶりに、大いに見る目を改めた。また、モデル地域での成功体験は、他の地域での改革実践にも大きな自信となり、その後のプロジェクトの定着・実行フェーズはスムーズに進んだ。このほかにも、製品開発プロセスの改革や営業体制の強化など、CDI-Sが提言した業務改革は広範囲にわたった。そして、プロジェクト開始から3年後には、営業利益率が2.5倍になったのを筆頭に、経営指標を大幅に改善することに成功した。

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